マーケティングで「世界平和」に貢献したい。国際協力NGOの寄付集めに、デジタルを活用

2022
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島 彰宏
認定NPO法人テラ・ルネッサンス
啓発事業部 オンラインマーケティング担当
島 彰宏

「世界平和」を掲げ、アフリカやアジアで「子ども兵」や「地雷」といった課題に取り組む国際NGO、テラ・ルネッサンス。
その活動資金として寄付を集める「ファンドレイジング」に従事する、島彰宏さんにお話を伺いました。
学生時代に国際協力を志しつつも、民間企業に就職。そこで身につけたマーケティングのスキルがNGOの仕事でも活かされ、将来のビジョンにもつながっているそうです。

「平和」から国際協力、そしてアフリカへ行き着いた学生時代


ー「大学院から旅行会社に就職。第二新卒で転職して、国際NGOへ」というキャリアをたどられた理由をお聞かせください。

実は大学の学部時代から、「国際協力のNGOで働きたい」と思っていました。

でも、新卒を採用しているNGOは、当時はほとんどなかった。
だから、大学生の頃にも普通に就職活動をして、教育業界の企業からも内定をもらいました。

でも、このま普通に就職してしまうと、「夢をあきらめてしまうな。一生海外に行かないだろうな・・」と。
卒業前の冬休みに内定を辞退して、1年勉強し、神戸大学大学院国際協力研究科に進学しました。

大学院を卒業する頃にも迷ったのですが、「社会人を経験して、NGOに転職しよう」と。
ご縁をいただいた旅行会社に就職しました。


ー「国際協力の仕事をしよう」と思ったきっかけは何でしたか?

子どもの頃に遡るのですが、私の曽祖父(ひいおじいちゃん)が広島で被爆して亡くなったそうでして、その話を小学生の頃に母親から聞かされたのが印象に残っています。

中学校の修学旅行で広島の原爆資料館を訪れたり、「サトウキビ畑の歌」という沖縄戦をテーマにしたドラマを見たりといった体験を経て、「戦争はイヤだ・・」「平和な世の中が続いてほしい」とう願いが、心のどこかを占めるようになっていました。

高校生の頃、大学進学を控えてやりたいことを考えた時、それまでを振り返るなかで、「世界の平和」に仕事でも携わりたいと願うようになりました。

でも、“平和をつくる仕事”ってなかなか抽象的ですよね?
途上国では今も戦争が起こっていると知り、「それなら途上国の紛争やその原因となる貧困について学びたい」と、経済学部に進学して開発経済学を専攻しました。

20代前半、大学院の調査研究でケニアを訪れた時に、現場の人達の生活がNGOの支援を受け変わっていく様子に感銘を受けまして。
国連機関や開発コンサルより「現場に近い」を重視して、NGOを志望しました。


大学院の調査研究でケニアを訪問


ー最初の就職先では、どんなお仕事を?

新卒で入ったのは、高速バスを運行している旅行会社でした。
当時は社員200名程度でしたがベンチャーの風土を残している企業でいろいろと新しいことに取り組んでいたので、「いつかはNGOに行くなら、若いうちから業務をバリバリ任せてもらいたい。厳しい環境でも、スキルを磨きたい」と。

マーケティングの部署に配属され、日本を訪れる外国人の観光客に、高速バスや旅行ツアーを販売する仕事でした。
オンライン広告の運用やWEBサイト制作のディレクション、検索エンジン対策(SEO)やGoogleAnalyticsを用いた分析など、チームも4人と少なかったので、WEBに関する仕事はなんでもやらせててもらいました。

入社した時はWEBの知識もほぼゼロだったし、英語・中国語・韓国語と多言語対応だし、分からないことだらけでしたがよく乗り切れたなと思います。

寄付集め=アナログ営業のイメージだったが、デジタルマーケの経験が十分に活かせた


ーそこからテラ・ルネッサンスさんに至るまでの道のりを教えてください。

最初は「3年間は同じ会社で」と心に決めていたのですが、1年半経った頃にうずうずと我慢できなくしてしまい・・(苦笑)
転職活動を始めました。

ただ、NGOの多くは「3年以上の社会人経験」が応募要件。それを承知で書類を2団体に出してみたのですが、いずれも不合格でした。
リクナビはじめ転職サイトで探そうと、「国際協力」と検索しても、マッチした求人はなかなか出てこない・・

そんななか、「PARTNER」というJICAの運営している国際協力専門の求人サイトでテラ・ルネッサンスの募集を発見。
アフリカで活動しているのもあり、大学院時代から名前は知っていたのですが、調べるとミッションがなんと「世界平和」の実現でした。

「元子ども兵の支援」や「地雷の除去」といった活動をしているということで、「ここは、私のやりたいことに”ど真ん中”でマッチしているな」と


ー社会人経験は、ネックにならなかったのですか?

テラ・ルネッサンスにも「3年以上の社会人経験」の要件はあったのですが、求めていた職種がちょうど「WEBマーケティング」。
「現職のデジタルマーケティングで、実質的には3年以上の濃い経験をしています!」と書類選考でアピールしたところ、面談してもらえ内定を得ました。

「経験年数が絶対ではなく、能力やモチベーションを何よりも重視しているな」と入職後に実感し、自分の判断は間違っていなかったなと思っています。

ー入職してからこれまで、どんなお仕事を?

今は、京都にある本部に勤務しながら、主にオンラインの広報や寄付集めを担当しています。
マーケティング戦略の設計から広報、デジタル広告の配信・管理や「季節募金」の運営まで、ひととおりの流れを責任者として担当しています。

新しい動きとしては、海外の方々から寄付を募るプロジェクトも始めました。
まずは台湾を対象に、中国語のサイトやSNSを運用していて、これは前職のインバウンドの経験が活きていますね。

入職直後は佐賀事務所に配属され、ふるさと納税で寄付を集めたり、九州地方の学校を回って講演をしたり、イベントを開催したりと「啓発」の活動もしました。


佐賀事業所に配属当時、創設者である鬼丸昌也理事と


ー企業での経験は活かせましたか?

これは意外だったのですが、すごく通じるものがあったんです。
企業とNGOで、売るものは違っても、やることは一緒でした。

転職活動をしていた当初は、NGOの寄付集めというと「街頭募金」や「電話かけ」といったアナログで“泥臭い”イメージでした。
だから、ビジネスの経験を活かす場所では無いと思っていた。

でも、転職先としてNGOを調べる過程で、「WEBマーケティングを活用して寄付を集めていること」「ファンドレイジングという資金調達の方法論があって、ビジネスとも考え方が通じること」を知って、国内でNGOがする仕事のイメージが大きく変わりました。

企業で商品やサービスを売るのも、NGOで寄付をお願いするのも、対象が違うだけで考え方は同じでした。
「マーケティングとは、売れ続ける仕組みを作ること」や「コンバージョンは細分化して考える」といった言葉は前職の上司に教わったのですが、それらは現職でも十分に活きています。

ーちょっと聞きにくいことですが、NGOへの転職となると、給与がネックでなかなか踏み切れない方も多いと聞きます。島さんはいかがでしたか?

もちろん民間企業と比べると給与は低いはずです。
私も転職した当時、給与は下がりました。

ただ不自由なく生活できていますし、今の自分にとっては問題ないです。

もちろんこの先、ライフステージの変化にともなって、不安がないわけではありません。
団体としても、職員が安心して働き続けられるよう人事制度などを変えようとしています。

もちろんすぐには大きく変わらないところではあるけど、私も時には要望も上げつつ、働きやすい環境をみんなで一緒に作っていきたいなと。

ー働きやすさというと、勤務時間や労働環境はいかがでしょう?

まだ小さな組織ですし、企業でいう「売上目標」にあたる目標数値もあるので、残業や時には休日出勤をすることもあります。

ただ、テラ・ルネッサンスで働くなかで感じる良さの1つは、一緒に働く人が、みんな「いい人」であること。
「社会のため」「誰かのため」に働いている人たちなので、お互いの気持ちを大事にし、気持ち良く仕事をできています。


団体設立15周年時に、スタッフが集まって


自分がやりたいことを”ど真ん中”でできていることも相まって、「働いていて、幸せだな」と。
正直、仮に何倍もの給与をもらえたとしても、人間関係がギスギスしていて、やりたいこともできないなら、今の方が断然良いと感じています。

「好き」や「得意」を活かして世界平和に貢献できる、幸せ


ーファンドレイジングの仕事のやりがいやアピールポイントをぜひ教えてください

私の仕事が、「この人たちのために役立っている」とダイレクトに実感できることです。

現場からの活動報告はもちろんですが、コロナ禍の前は、年に1回程度ですがアジアやアフリカの現場に足を運んでいました。
「現地の人が、支援で笑顔になった」「私たちが集めてきたお金が、こう使われた」が実感できると嬉しいですし、逆に「私が頑張らないと、この人たちの苦しさは解決しない」と奮い立たせられます。

寄付者さんとお話ししていても、お一人ひとりの想いを感じられます。

テラ・ルネッサンスのご支援者さんは素晴らしい方が多くて、「寄付してあげている」といったスタンスではなく、むしろ「寄付させてくれてありがとう」と言葉をいただくことがある。
思いがこもったお金なので、「何としても寄付を有効に届けなくてはならない」と感じます。


活動地であるウガンダを訪問したときに、元子ども兵の方と

ーキャリアのビジョンがあれば、教えてください?

私は国内の業務がメインなので、「現場に出たことがない」ことに、当初どこか物足りなさを感じていました。

国際協力の世界では、途上国支援の「現場」が“花形”。
その経験をしていないので、「このままでいいのかな・・」と、どこか心のしこりがありました。

でも、最近は「それで良いんだ」と考えるようになりました。

なぜかというと、入職してからファンドレイジングの面白さを改めて知って・・

私は数字を分析するのも、WEB広告を運用するのも大好きなので、好きや得意を活かして世界平和に貢献できるのは、なんて幸せなことだろうと
「国際協力」と「マーケティング」の掛け合わせを軸に、キャリアを形作ることも選択肢の1つだと感じています。

将来的には、もしかしたらコンサルティングのような形で、他の団体さんに伝えていくことも面白いかもしれません。

もちろんすぐにという訳ではなく、テラ・ルネッサンスは「世界平和を実現したい」という自分のビジョンと一致した1番の場所なので、ここで頑張っていこうと思っています。
世界平和がゴールであることは、ぶらさずに進んでいきたいですね。


ー最後に、非営利セクターに転職を考えている方に伝えたいことはありますか?

今までお仕事をされてきた方は、その経験を活かせるフィールドが絶対にあるということです。

営業やマーケティング、あるいは会計やITもそうかもしれません。
ビジネスで培ってきたスキルは、NGOでも共通して求められますし、まだまだスキルをもった人材は不足している実感があります。

もちろんこの業界も、完璧ではありません。
先ほど話した給与水準もそうですし、想いだけで働きやすさがないと続かない。

でも逆に言えば、優秀な人材にとっては変える余地がたくさんあるということだし、そういった方々と一緒に日本のNGO盛り上げていきたいという気持ちです。
国際協力に関心のある方は、NGOでのキャリアもぜひ考えてみてください。

経歴
  • 2013年3月 滋賀大学経済学部卒業
  • 2016年3月 神戸大学大学院国際協力研究科修了
  • 2016年4月〜2017年9月 WILLE(ウィラー)株式会社
  • 2017年10月〜 認定NPO法人テラ・ルネッサンス
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