なぜ他団体事例をマネしても、うまくいかないのか?ー現場で役立つ、寄付マーケティング戦略の立て方ー

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この連載では、WEBマーケティングで寄付を募るための、LP(ランディングページ)や広告などを活用法をお伝えしてきました。今回は、具体的な事例やノウハウの裏側にあるマーケティング戦略の立て方、特に「3C分析」と呼ばれる方法論についてご紹介します。

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目次

広告やLPを「いきなり作ってはダメ」な理由

この原稿を書いているのが、「寄付月間」でもある12月の下旬。
Facebookを眺めると、数多くの非営利団体の広告が、私のニュースフィードには並んでいました。

東北の医療支援やひとり親サポート、途上国の子ども達のスポンサー募集に、難民や紛争への緊急支援など
広告をクリックすると、団体のホームページ(Topページ)ではなく、たとえばマンスリーサポーター募集の専用に作られた、LPに遷移するという仕掛けです。

「LPっぽいデザイン」を整えても・・

この連載で初めて寄稿をしたのが2016年夏。その頃から比べると、たとえば「ファンドレイジング専用のLPを作る」という方法論が、だいぶ普及してきたように感じています。

積極的なWEBマーケティングに挑戦する団体が多くなるにともなってか、「広告を出したものの、CPA(顧客獲得単価)が数万円になってしまった」「○○さん(他の団体)を参考にLPを作ったけど、コンバージョン(CV)が獲れなかったんです」といったご相談をいただく機会も、2017年には増えました。

WEBマーケティングで成功する団体と失敗する団体では、どこにその差があるのでしょうか?

LPを例に挙げると、キャッチコピーで使われている言葉や写真のテイスト、メッセージの順番などは、目に見えて分かりやすいでしょう。
いわゆる「LPっぽい」デザインに整えればそれっぽく見えますし、ボタンの形状なども目立つ箇所です。

オモテからの見え方 VS ウラ側の戦略

過去に別の記事でお伝えしたように、LPにもある程度は決まった「型」があります。
既にうまくいっている団体の特長を上手に取り入れられれば、成功までの時間をショートカットしやすいのも事実です。

一方、似たようなコンテンツやデザインやを並べても、「事業内容やイシューあるいは支援メニューが異なれば、まったく反響がなくなってしまう」というケースを私自身も経験してきました。

実は大事なのが、オモテに見える制作物のウラ側にある戦略です。

「このNGOは、なぜ○○というメッセージを掲げているのか?」
「長いLPを作っているのは、どんな背景があるのか?」

このような背景を読み解かずに、ある団体では「正解」だったやり方を、うわべだけ模倣してもうまくいかない確率が高くなってしまうのです。

3C分析とは?現場で役立つ、泥臭い戦略の作り方

そこで大事なのが、一つひとつの団体に合ったメッセージや見せ方を組み立てていくこと。

私がWEBマーケティングを腰を入れてお手伝いするときに、欠かさないのがリサーチ・分析と戦略策定の作業です。

LPや広告などクリエイティブを企画する前に、自団体の強みや競合の訴求点などを棚卸し
それらのリサーチや分析にもとづいて、ポジショニングや差別化ポイントを明確にしていきます。
そのうえで、マーケティング戦略と訴求メッセージを作り上げます。

と書くと、面倒に感じられると思いますが(実際にそれなりの工数もかかりますが)、この段階で手間をかけるか?で成果が大きく変わってくるのです。
これらの工程を進めるうえで、すべての基盤となるのが、「3C分析」と呼ばれる手法。
ビジネスの世界でも、戦略策定のために広く使われるフレームワークです。

「市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Compan)」の3つの切り口から、あなたの団体が置かれている環境を俯瞰的に見てみましょう。

市場(Customer)

1つ目は、「市場」のリサーチです。
切り口の1つとして、「国際支援」と「国内支援」とに分けて考えてみましょう。

国際支援なら、寄付市場の規模は大きく成長はしていないと推測されるものの、たとえば「途上国や紛争地帯の子どもを、助けなければいけない」という感覚を抱いている方は多いでしょう。
ユニセフや国境なき医師団など、資金調達規模の大きなNGOがひしめき合っていますし、それは同時に、NPO/NGOに支援経験のあるドナーが一定数いることも意味します。

他方で国内支援に目を向けると、ファンドレイジングの面では突出したプレイヤーはまあ少ない分野です。
「子どもの貧困」がマスコミで頻繁に報道されるなど、支援の必要性が訴えられる機会が最近では増えており、市場は成長の兆しを見せています。
その一方で、一般の方のなかには「自分がお金を出してまで助けなくてはいけない人たちが、日本にもいる」という感覚を抱けない方も、まだまだ多いように感じられます。

対照的な2つの市場において、有効なメッセージの打ち出し方や差別化ポイントの具合は異なります。
また寄付や募金の他に、「ふるさと納税」や「クラウドファンディング」「チャリティ商品」など、共感性を武器に別の手段で資金調達を目指す場合もあるでしょう。
その時も、「市場の規模は?」「成長しているか?」などの観点から、戦うフィールドを決めましょう。

これらの市場の動向を概観するうえで、参考になるのが「寄付白書」をはじめとした統計データ。
自団体の求める正確なデータは手に入らないこともあるかもしれませんが、大まかなトレンドや規模感を把握するために、市場を俯瞰的にみる習慣を付けるとよいでしょう。

昨年秋に発行された「寄付白書2017」

競合(Competitor)

2つ目は、競合の調査です。
ソーシャルセクターでは、同じ分野で活動をしている団体も「社会課題を解決する仲間」であることから、ビジネスと比べると「競合」という感覚は持ちにくいかもしれません。

また寄付は一般的な商品と異なり、共感や悲しさなど感情をベースとして起こることが多いため、数ある団体から「比較して選ぶ」というプロセスが起こりにくいという考え方もあります。
その一方で、寄付をする方の視点では、あなたの団体は必ず比較されています。

たとえば、チャリティイベントを開いた企業のCSR担当者が、「アフリカ 寄付」などと検索して寄付先を探す場合を考えてみましょう。
いくつかの団体をリストアップして、「きちんと活動をしているか?」や「資金の使途は公開しているか?」「団体やスタッフは信頼できそうか?」などを、WEBサイトで見比べたり、時には事務所を訪問してスタッフと面談しているはずです。

検索ではないシチュエーション、たとえばソーシャルメディアでの発信に動かされ寄付した方は、その時点では明示的に比較をしている団体はないかもしれません。
しかし、過去に寄付をしたり支援先を検討したりした経験がある方も少なくないはずです。

寄付者さんに話を聞くと、支援を決める時に心の中で「●●(別団体名)に寄付した経験があってその時に寄付の使途を報告してくれた。▲▲(団体名)のWEBサイトを見たときも、その時の体験を思い出して信頼して寄付した」、「●●はやっている人が見えなかったけど、▲▲は代表やスタッフの思いが伝わってくるから、今年は▲▲は」など、比べたうえで意思決定している方も多いようです。
このように、他団体を意識することが重要なことはお分かりいただけたでしょうか?
(競合を「出し抜く」という意味では決してなく、寄付者さんにとって適切な違いを分かりやすく伝えて、より良い選択肢を提供する、という趣旨で私は考えています。)

あなたの団体の寄付者さんが、「他にも支援している団体」や「寄付先を決める時に迷った団体」でよく名前が挙がる団体は、ひととおり調べてみましょう
そのうえで、WEBサイトや寄付を呼びかけるLP、年次報告書やチラシなど、公開情報だけでもだいぶ材料は集まります。

私がオススメするのは、その団体にあなた自身が寄付してみること。
申込フォームの使いやすさやお礼や領収書のコミュニケーション、支援者向けメールやDMなどを見れば、「どのような戦略をとっているか?」がだんだんと見えてくるはずです。

自社(Company)

3つ目は、自社(自団体)です。

数ある団体の情報のなかでも、どこを重点的にアピールすればよいか?
まずは視野を広げる意味で、どんなに小さくてもよいので最低50個は洗い出すことを、推奨いています。

強みを洗い出すうえで難しいのは、団体のスタッフが認識している「強み」と、支援者が魅力を感じているポイントは、異なるケースが少なくないこと。
たとえば、スタッフは「具体的な事業内容」「支援のノウハウ」を強みとして挙げていた方が多かったものの、支援者は「取り組んでいるイシュー」や「創業者の想い」に魅力を感じていた、とズレが分かったことがありました。
せっかく強みを洗い出しても、支援者のニーズに合っていなければ、そればかり伝えても効果的ではありません。
そこでお勧めするのが支援者に「どこが支援の決め手になりましたか?」「他の団体と比べて、一番良いと思ってくださるのはどんなところですか?」などと聞いてみることです。

営業やイベント、支援者サポート(問合せ対応)など、寄付者とコミュニケーションの接点があるスタッフの方に、ヒアリングしてみても良いでしょう。
「この●●ちゃんのエピソードが、響いている」「●●という事実を伝えると、信頼してもらえる」などと、LPにも盛り込める具体的なヒントが見つかるはずです。

まとめ:3C分析から、ポジショニングへ

これまで3C分析について、ファンドレイジングの文脈から論点になりやすいことを踏まえて、解説しました。
一般のビジネスにも共通する、汎用的な方法や詳しいやり方については、世にある良書をご参照いただければと思います。
(初心者の方には、「なぜ、あなたのウェブには戦略がないのか?―― 3Cで強化する5つのウェブマーケティング施策」という本を、お勧めしています。)
こうしたプロセスを経たうえで、続いてはSTP(セグメント・ターゲット・ポジショニング)を定めるプロセスに移ります。

自団体・競合の条件を加味したうえで、どんなターゲットを設定するのか?
そのうえで、「どんなメッセージを打ち出していくのか?」「プロモーションではどこに注力するのか?」といった議論をしながら、ポジショニングを明確にしていきます。
ターゲットの深掘りやポジショニングの軸の設定、それらをクリエイティブに落とし込んでいくプロセスについては、ケースバイケースのことも多く、残念ながらまだファンドレイジングの文脈では普遍化できていません。
またチャンスができればお伝えしたいと思います。

戦略が“机上の空論”にならないため、“生の声”を

3C分析の章でも少しお伝えしましたが、こうした分析・リサーチや戦略策定を勧めるにあたって、何よりも重要と私が考えているのは「寄付者の行動や気持ちを、深く理解すること」です。

「どんなきっかけで支援を始めてくださったのか?」
「私たち以外に、応援している団体は?」
「なぜ寄付を続けてくださっているのか?」

これらの寄付者心理を理解するための方法ですが、思い切って寄付者の方に質問をぶつけてみてはいかがでしょうか?
(はじめはハードルが高ければ、先ほども書いたように、寄付者さんと接しているスタッフに聞いてみるとよいでしょう。)

たとえば1人30分ずつ、3-5人にお話を聞いてみるだけでも、ヒントが見つかるはずです。

「一番の決め手と思っていた寄付の使途はあまり理解されておらず、創業者の語るストーリーが印象に残っていたみたいだ」
「スタッフや馴染みの支援者には当たり前のことが、新規の支援者には伝わっていなかった・・」

など、意外な事実も分かるかもしれません。

実は私も6年前、NPO法人に転職してファンドレイジングを始めた時、最初にしたことは、既存のサポーター会員の方、10人以上にお話を伺うことでした。

データベースから知らない方を抽出して、一人ひとりにメールを送り、ご快諾いただけた方と予定を調整。
その方の職場やご自宅の近くを訪ねて、団体を知ったきっかけや寄付を始めた理由、「今はどのように感じているか?」など、聞かせてもらったものでした。

その後のファンドレイジング戦略の策定やクリエイティブ制作などにあたっても、「●●さんみたいな支援者に届けよう」と寄付者の顔を明確に思い浮かべて考えられ、とても役立ったと感じています。
現在もNPO/NGOのコンサルティングをするときには、この「支援者の声を聞く」プロセスをできるだけ取り入れてもらうようにしています。
3C分析やポジショニングなど、フレームワークづくり。そして支援者の生の声の収集。
これらを同時並行で進め、小さな仮説検証を繰り返していきましょう

リサーチから分かったことを元にLPの構成を練っていくと、参考事例を単にマネするよりは、圧倒的に支援者の心に響く、コンバージョン率の高いページができるはずです。

ご支援者の気持ちに寄り添って、戦略を立てる。ぜひ実践してみてください。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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