「支援者サポート」の自動化で、バックオフィスの安定と良い“寄付体験”を両立する

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個人寄付を募るにあたって、地味ながらも欠かせないのが「支援者サポート」。寄付者さんからの問い合わせ対応や、決済情報の変更といったサポート業務を“自動化”することで、スタッフの負荷を下げながら寄付者の方々の利便性や満足度を高める方法論を、お伝えします。

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目次

住所変更や領収書発行など、月数百件まで問い合わせが増加も

支援者サポートとは、企業の「カスタマーサポート」と近い部門や職種のこと。
寄付者さんからの問い合わせに回答したり、お礼のご連絡をしたりしながら、データベースや決済の情報を適切に管理する役割
を果たします。
(名称は、「ドナーサポート」や「寄付者管理」など、団体によってそれぞれ異なります。)

「領収書の名義を△△にして、発行してほしい」「△△円を銀行口座に振り込みました」といったお一人ひとりからの質問や依頼に回答していきますが、ファンドレイジングが軌道に乗ると、その分必要な人員も増えていきます。
特にマンスリーサポーターをはじめ継続寄付者が増えると、変更手続きやデータベース管理の業務も増えます。

「自動引き落としのクレジットカードを、変更するには?」
「毎月の寄付金額を、1,000円から2,000円に増やしたいです」
「年次報告書が届きませんでした。引っ越したので新しい住所を登録してください」

このような問い合わせも、支援者数が数百人から千人までの規模ですと1日に多くて数件ほどなので、片手間でも対応できるでしょう。
しかし、支援者数が数千人、さらには1万人超など規模が拡大すると、問い合わせも月に100件以上に。
確定申告前の領収書発行も重なる1-3月の繁忙期には、数百件の問い合わせが寄せられることもあります。

団体のキャパシティ以上に問い合わせが寄せられると、オペレーションの混乱や人手不足の慢性化に至りやすくなります。
せっかく寄付をいただいても、「問い合わせやお礼の対応が追いつかない」となると、寄付者さんに迷惑をかけてしまい、団体の信頼も損ないかねません。
キャンペーンや広告などファンドレイジング活動を縮小、なかには取りやめたケースもありました。
支援者サポートの逼迫(ひっぱく)は、寄付収入の成長の制約要因にもなりうるのです。

「セルフサービス化」で業務の工数削減と、寄付者さんの満足度アップを両立

このような支援者サポートの課題の解決策として頭に浮かびやすいのが、人員の増強でしょう。
しかし、スタッフの採用や育成はすぐには難しいですし、寄付収入の増加に比例してコストも増えてしまいます。

そこで寄付者数の増加とともに手を打っていきたいのが、支援者サポートの業務の整理。
キーとなる考え方の1つが「セルフサービス化」、すなわち寄付者さんご自身がオンラインで課題を解決できるようにWEBサイトなどを整備していくことです。

視点1:人手を介さなくてよい問い合わせは、自動対応の仕組みをつくる

マンスリーサポーターが継続決済のため登録しているクレジットカードの変更を例に、考えてみましょう。
寄付者さんが「カードを変更したいけど、どうすればよいか分からない‥」と事務局に電話をかけたとします。

せっかく電話をいただいても、カード情報を電話で聞き取るのは個人情報保護のリスクが大きく、団体の規定でもNGになることが多いでしょう。
そこで、「メールアドレスに変更用のURLをお送りして登録してもらう」という手順をたどります。

スタッフには電話を受ける工数がかかるほか、メールを送信してから決済成功を確認、変更完了のメールを返信する、と何度もやりとりをしなければなりません。
なにより寄付者さんにも、電話とフォーム登録の二度手間をかけてしまいます。
それなら、はじめからクレジットカード変更の専用フォームを用意して、フォームにカード情報を登録してもらえたらどうでしょう?

カード変更フォームで自動対応

登録完了の自動返信メールが送られる設定にしておけば、担当者も「月に1回」などまとめて処理すればよいので、個別対応が発生しにくくなります。
このように自動対応の仕組みを整えればよいのは、カード変更だけではありません。

分類 項目 解決策
個人情報 住所、メールアドレス、氏名 専用フォームの用意
ご支援内容 金額変更、退会、決済方法(クレジット・口座振替など)
領収書 領収書の必要有無、送付先住所 領収書発行前の一斉メール配信で確認
ご報告 メール・郵送の配信有無 申し込み時のフォームで選択

個別でヒトがお答えする必要がない問い合わせについては、フォームを用意するなどして、できるだけ寄付者さんがご自身でオンラインで手続きできるようにする。
この「セルフサービス化」が進めば、寄付者さんにとっても「やり方が分からないから問い合わせる」というストレスを抱かないですし、手続きにかかる時間も減らせます。

さらに重要なのが、顧客が手間なく手続きや申し込みをできることは、信頼や愛着といった「ロイヤルティ」にプラスの影響を与えること。
ビジネスの世界では定量データで実証されていますが、米国での研究結果を紹介すると‥

“「努力のあまり必要ない(低努力)」を経験した顧客と、「多大な努力を要する(高努力)」を経験した顧客のロイヤルティーを比較したところ、企業へのロイヤルティーが低いと答えた人の割合は、前者はわずか9%なのに対し、後者は96%にものぼった”
(出典:ITmedia「お客様への“努力”を減らすには、どうすればいいのか」より)

逆に言えば、「どこに問い合わせをすればよいか分からず、イライラした」といった経験は、購入意向にもマイナスに働くと知られています。
寄付者さんと団体との関係性を滑らかにすることで、気持ちよく継続的に支援してもらうことを目指しましょう。

視点2:寄付者さんにわかりやすく、チャネルや導線を整える

このように自動対応の仕組みをつくっても、フォームを見つけられなければ使ってもらえません。
「結局は電話やメールで問い合わせをいただいてしまう」を防ぐため、寄付者さんにはたとえば以下のように周知をはかっていきます。

  • お問い合わせフォームやFAQのページから、ご案内のリンクを載せる
  • WEBサイトや寄付ページに、「ご支援者専用の問い合わせ」といったナビゲーションを載せる
  • 「団体名 クレジットカード変更」といったキーワードで検索したときに上位表示されるよう、ページのタグなど変更する
  • メールマガジンの下部で「住所変更はこちら」など案内する
  • 年次報告書など郵送物には、QRコードや検索ワード付きで問い合わせの案内を添える
  • LINE公式アカウントでも、固定表示されるメニューなどでWEBサイトに誘導する
  • 領収書のシーズンには、SNSアカウントでも変更用フォームを告知する

これらの施策をするにあたって、特に減らせるとよいのが電話での問い合わせ。
1回あたりの対応コストを人件費に換算すると高いですし、リモートワークを推奨している団体だと「電話番」の確保にも苦労しやすいはずです。
もちろん電話が必要なユーザーのための導線は確保しておくべきですし、単純に電話番号をわかりにくくするだけでは、困ってしまう方もいらっしゃいます。

そこで前提になるのは、電話をしなくても課題を解決できるようにすること。
そのうえで「やり方が分からないから、とりあえず電話で聞こう」といった行動を寄付者さんが取りにくいように設計します。

「団体サイトで、電話番号の表示が必要以上に目立っていないか?」
「団体名で検索したとき、たとえばリスティング広告で電話番号が表示されないか?」

寄付者さんの目線に立って、WEBサイトや印刷物などを見直しましょう。
はじめに手をつけるべきは、それぞれのチャネルから、どのような内容の問い合わせが何件発生しているか?
過去3ヶ月間など実績データで把握することです。

電話 メール 問い合わせフォーム 専用フォーム 合計
支援のお申し込み・質問 20 10 25 10 65
登録情報の変更 10 15 20 10 55
領収書関連 10 20 40 30 100
その他 25 10 10 35 80
合計 65 55 95 85 300

そのうえで、「次の四半期では領収書の発行シーズンにそなえ、FAQの充実と住所変更フォームの設置に注力」といった施策を計画していくのです。

マイページ、LINE、チャットボット‥支援者サポートの未来図は?

このような過程において、必ずといってよいほど議論に挙がるのが「マイページの開発」です。
専用フォームでは、寄付者データの目視や手作業でのマージなど、「裏側」のオペレーション処理が必要ですが、マイページでは自動処理の割合が大きくなります。
団体のオペレーションにとっては、望ましいことでしょう。

支援者数が数万人までの規模なら、フォームが現実的

しかし、寄付者用にマイページを設置している非営利団体は、支援者数10万人以上など大手国際NGOの数団体に限られるようです。
開発費用がかかるのはもちろんですが、ポイントは「寄付者さんがマイページを使ってくれるか?」
動画のサブスクや食材の定期宅配のように“普段使い”のサービスですと、マイページによる利便性が高いですが、寄付の申し込みや手続きは「せいぜい年に1、2回」という方が多いでしょう。

利用頻度の低いサービスについては、「ID・パスワードを忘れた」「ログインできないから電話をした」など、慣れないユーザーの対応の方がコストがかかってしまう例も知られています。
大多数のNPOにとっては、フォームによる対応が現実的でしょう。

LINEやチャットボットが、企業のCSでは普及

BtoCサービスを展開する企業では、LINEをカスタマーサポート(CS)の基盤に据える企業が増えてきています。

  • 寄付者がわからないことを打ち込んだら、チャットボットで自動回答
  • 上記で解決できなかった問い合わせは、有人でのサポートに引き継ぎ

ができれば、寄付者にとっての利便性も高まります。

最近では「ID連携」といって、顧客データベースとLINEが連携して、「LINEで変更した情報がデータベースにも自動的に反映する」といった仕組みを導入する企業が増えています。

(参考)FiNE「LINEから解約抑止率10%も!CSコストを抑えて、売上アップする方法

中高年層にもLINEの利用は浸透していっていることを踏まえると、ファンドレイジングでも3~5年をかけて「LINEによるチャット対応」が普及していく、と私は予想しています。

団体にとってオペレーションコストを削減して、寄付収入増加の制約要因を取り外すこと。
寄付者さんにとってのユーザビリティを高め、より良い寄付体験を用意すること。


両立する仕組みを整えていくことが、支援者サポートにとって大切になるはずです。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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