WEBから寄付の申し込みが自動的に起こる、ランディングページ(LP)の作り方

2016
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WEBマーケティングの分野で、「LP(ランディングページ)」という言葉を聞かれたことはありますか?ファンドレイジングにあたっても有効性が実証されていますが、作り方が分からずに苦労している団体もあるようです。「LPとは?」や「なぜ必要か?」から、コンバージョンが獲れる“鉄板”のパターンまでを解説しました。

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目次

WEBからのファンドレイジングに必須。ランディングページとは?

「寄付を募るためにWEBでキャンペーンを打ったけど、反応が良くなかった」
「Facebookで広告を出してみたけど、数万円かけてCVが0件だった」

といったご相談をいただいたことがあります。

WEBサイトに1ヶ月に10,000セッション以上のアクセスがあっても、数件の寄付しか集まっていなかったケースもありました。
詳しく話を聞いてみると、寄付の誘導先として団体のホームページのTopページや寄付の手続き方法を記載したページに誘導していたようでした。

WEBからの新規寄付獲得を伸ばしたいという団体に私がコンサルティングをさせてもらう時、ほとんどの場合取り組むのが、ランディングページ(LP)の制作です。

ファンドレイジングにおけるLPとは、寄付を募るため専用に作られた、1枚もののページのこと。
団体が取り組んでいる社会課題や事業内容、支援の依頼や寄付の使途まで記載して、「この1ページを読めば、今まで団体を知らなかった人でも、寄付という行動を起こしてもらえる」という内容になるよう設計します。

たとえば私がお手伝いしている団体では、子ども達の教育へ寄付を募るためにLPを活用していますが、LPをテスト・改善しながら月間200件以上など新規寄付者の獲得数を増やすことができました。

LPを訪問したユーザーが仮に10,000人いたとします。
そのうち100人が寄付を申し込んでくれた場合、100人÷10,000人=1%が「コンバージョン率」。LPをみたうち1%のユーザーが寄付を申し込んでくれるという計算です。

この数値を高めていくために、PDCAを回していきます。
きちんとしたセオリーにもとづいてLPを制作し、A/Bテストなどによってコンバージョン率を高めていくのが、WEBを活用したファンドレイジングの王道と言えるでしょう。

「縦長のLPが、コンバージョン率が高い」テストで証明されてきた事実

なぜLPが必要なのでしょうか?

はじめにビジネスの世界では、インターネットでモノを販売するのに効果的な方法と、数々のテストによって証明されてきたからです。

あなたもネット広告をクリックしたとき、ひたすら縦に長いページを訪れたことがあるかもしれません。商材にもよりますが、このように「縦長の1枚モノのページがコンバージョン率が高い」とECの歴史のなかで結果が出てきました。

これは「寄付」の世界でも同様です。
国際協力NGOなどオンラインでの寄付獲得を効果的に行なっている団体は、必ずといってよいほど、広告の遷移先として専用のLPを必ず用意しています。

あなたが個人として寄付を検討したことがあるなら、「どの活動に寄付すればよいのか迷って結局やめた」「活動の詳細や税制優遇など手続き面について調べるにあたっていくつかのページにいかなくてはいけなくて、面倒でやめた」という経験はないでしょうか?

私が手がけてきたなかでも、LPを用意する時間がなくて通常のページを遷移先としたところ、広告のCPA(=費用対効果を図る指標)が目標の2倍近くになってしまったこともありました。

もちろん、新聞やテレビでの報道や、報告会などリアルの場で活動について十分に理解・共感した方にとって、WEBの情報をほとんど見なくても、申し込みフォームまで進んでくれることもあるでしょう。
しかしWEBで初めて活動に出会った方が、心が動かされたその瞬間に寄付まで至ってもらうためには、共感から行動までの落とし込みが必須です。

複数の事業を展開していたり、プロジェクト別の支援メニューを用意したりしている団体も多いでしょう。
だからこそ、寄付を検討している方に迷わせないため、1つのテーマに絞って寄付を募り、1ページで検討するにあたって必要な情報を1ページに完結させて、できるだけ短いページの遷移で寄付まで至るようにできるのが、オンラインでの寄付を増やすために重要なポイントです。

そのためには、LPという手段が有効なのです。

コンバージョンがどんどん獲れる、LPの“鉄板”ストーリー

では、このLPを具体的にどうやって作ればよいのでしょうか?

NPOにありがちなのが、「うちの団体は、こんな活動をやってます」という事業内容を前面に押し出してしまうパターンです。
何も知らない方にとっては、事業内容だけを詳しく訴えられても、共感するのはなかなか難しいかもしれません。

LPを見る方に先に伝えるべきは、「困っている人がいる」こと、つまり団体が取り組んでいる社会課題です。
国際協力NGOや国内NPO、災害救助団体など、あらゆるLPを見てきたが、共通するのは課題→解決策→成果というパターンです。

そのような流れのなかで、私がLPを設計するときには、3つのポイントを意識しています。

1つ目は、社会課題を解説するなかで、寄付者の心を揺さぶることです。

「どんな切り口から話し始めたら、ピンときてもらいやすいか?」
「『かわいそう』や共感、怒りなどどのような感情を喚起すればよいか?」
「どのようなエピソードが、心を打つか?」

などを、支援者のインサイトを踏まえて、徹底的に検討します。

2つ目は、団体のアプローチが共感をしてもらえるようにすることです。

いくら課題が解決の必要性があると共感してもらっても、同じような課題に取り組む団体は、他にもあるはずです。
そのなかで、あなたの団体を選んでもらうためには、何が差別化ポイントになるのでしょうか?「

課題と解決策の整合性をピンとくるように説明できるか?」
「活動に取り組む想いに共感してもらえるか?」
「団体の活動によってハッピーになっている人がいることを、イメージしてもらえるか?」

などに留意して、メッセージを組み立てていきます。

3つ目は、申し込みにあたっての不安要素をどれだけ消せるか?です。

初めての団体にお金を出すというのは、ハードルが高い。支援をしようかと思った方でも、「立派なことを言っていても、実際のところはどうなのだ?」「お金を公正に使っているか心配だ。」と言った不安がよぎるものです。

そんな疑問や不安に応えるために、どんな団体で、誰が働いていて、周りからはどのように見られているいるのか?を「見える化」します。

第三者からの推薦や公的機関からの評価などを載せるのも有効です。

紙幅の関係上、それぞれの要素について詳しくは説明できないのが残念ですが、私がコンサルティングで使っているひな型を載せました。

「このすべてを含むべき」というのではなく、あくまでストーリーの例ですが、もしあなたの団体でLPを活用しているならば、構成を比較してみると気づきがあるかもしれません。

これからLPを作るという方には、1つのパターンとしてもしよければ参考にしてみてください。

分類 項目 例(途上国での食糧支援の場合)
1.社会課題 個別のエピソード(定性) ○○ちゃん(5歳)は、命の危機に
社会的な統計データ(定量) 紛争による食糧難で○万人が苦しむ
問いかけ 私たちにできることは何があるでしょうか?
2.解決策 創業のきっかけ・想い 何も役に立てなかった悔しさから行動
事業モデル・仕組み 先進国で余った△△を、無料で引き取り
活動内容 紛争や気候変動に苦しむ地域に届ける
3.成果 受益者の感謝の言葉(定性) 「おかげで、すくすく育っています」
事業のインパクト(定量) ○万人の栄養状態が○%改善
4.支援の依頼 未解決の課題 △△地域では、いまだ栄養失調に苦しむ
寄付で実現したいこと 新たに○○のプロジェクトを開始
○円で△△できる 月1,000円の寄付で△△を届ける
5.信頼性要素 団体概要 法人名・創立年・住所など
スタッフメッセージ 代表/創業者や現地スタッフなど
支援者の声 マンスリーサポーターや寄付者など
社会的証明 マスコミ掲載や受賞歴、行政との協働など
会計報告 BS/PLや使途グラフなど
6.寄付をしたら お礼・報告 報告書の郵送やイベントの招待など
Q&A 「途中で解約できますか?」など
税制優遇 税額控除や領収書など
7.最後のひと押し 締切・限定 「○月○日までに30万円が足りない」など
申し込み方法 「WEBフォームで簡単3分」など
情緒的なメッセージ △△△な社会を実現するために今すぐ一歩を踏み出してください
この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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