「私の3,000円はきっと役立つ」と確信してもらうための、“寄付の使い道”の伝え方

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「寄付の使い道」をわかりやすく伝えられるか否か?が、寄付依頼の成功確率はもちろん、平均金額にも影響を及ぼすことが実証研究でも明らかになっています。「私の3,000円はきちんと使われるのか?」「少額だとたいして役に立たないのでは?」といった寄付者の不安や疑問に寄り添いつつ、「この団体ならきっと役立ててくれる」と信じて託してもらうための伝え方を、大手国際NGOの先行事例やドナーインタビューから見えてきた傾向などを踏まえて解説します。

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目次

「寄付しました。活動内容はよく覚えてないけど‥」の不思議

前回の記事で、個人寄付者の方20名以上にデプスインタビューをして見えてきた傾向をお伝えしました。

そのなかで何人かに共通していて驚いたのが、寄付した団体の活動を具体的には覚えてない方がいらっしゃったことでした。
逆に何が印象に残っているか?というと、「3,000円でワクチンを届けられる」などの使い道の例です。

難民支援のNGOにマンスリー寄付を始めたきっかけは、街頭で声をかけられたことでした。「1日100円、ペットボトルの水1本分の寄付(1ヶ月3,000円)で、こんな支援をできます」とパンフレットを見せながら説明してもらったのが印象に残っています。(女性・60代後半)
ある有名な国際NGOから、10年前に封書が突然届きました。NGOが寄付金で活動していて、3,000円で多くの子どもにワクチンを与えられると知ったのを、今でも覚えています。「こんな私でも社会貢献できて、たった3,000円で子どもを救えるのなら素晴らしいことだ」という気持ちで今も寄付しています。(男性・60代後半)
毎月5,000円を子ども支援団体に寄付しています。災害や紛争が起こった時なども、寄付先を調べるのですが、支援内容や団体規模のほか1回の支援額や、その金額でどのような支援ができるか?を検索して調べてから寄付するようにしています。この団体は月1,500円などもっと安い金額帯もあったのですが、5,000円だとワクチンや食料などを子どもたちに十分に届けられるとわかり、この金額にしました。(女性・50代後半)

これらの事例のように「◯円で△△できる」といった使い道が、寄付するか否か?の意思決定の後押しになっているとわかります。

「1,000円だと、思ったより多くは助けられない。月3,000円寄付すると多数の栄養食や井戸を提供できると知って、決めました。」といったように、「いくら寄付するか?」を決める目安になっているケースもありました。

このように寄付の使い道が、多くの寄付者さんの選択に影響を与えるのは、なぜでしょうか?

「◯円で△△できる」ドネーション・サンプルはなぜ有効か?

寄付は一般的な買い物とは異なり、形のあるモノを対価として受け取れる訳ではありません。
「私の出したお金が、困っている人に届く」という感覚を抱きにくく、不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。

「素人感覚だと、寄付額がどれほどの価値になるのかわからない」「ビジュアルや数字で示されるとわかりやすい」といった声も聞かれました。
したがって、私が寄付をしたら「どのように役立つのか?」や「何が変わるのか?」といった疑問に直感的に答えられると、寄付を決めやすくなります

日本ファンドレイジング協会が発行する「寄付白書2015」でも、“寄付先を選ぶ際に重視したこと”の1位は「寄付金の使い道が明確で、有効に使ってもらえること」でした。
使い道を明確にイメージしてもらえるようにすることで、寄付は集まりやすくなるのです。

典型的に用いられるのは、「ドネーション・サンプル」。
「5,000円で、途上国の子どものためのワクチン30人分を」といったように、寄付金額あたりに換算して、届けられるモノや実現できることを示す手法です。

国際NGOなどのマーケティング事例

国際NGOのファンドレイジングでは、寄付を募るページだけではなく申し込みフォームにも、「◯円で△△できる」といった寄付の使途が表示されているのをご覧になったことがある方も多いでしょう。

国際NGOのWEBサイトでの記載例(団体名の敬称略)

※左側の画像は公益財団法人日本ユニセフ協会WEBサイトより、右側の画像はNPO法人国境なき医師団日本WEBサイトより引用いたしました。

使途の例を表示することで、CVR(=「コンバージョン率」といって寄付を申し込むユーザーの割合)が上がることは、私も経験したことがありました。
逆に、団体が取り組む社会課題や活動にどんなに共感してもらっても、使い道をわかりやすく示せないと、最後に寄付には至らないこともあるとわかってきました。

その団体の場合、広告は良いパフォーマンスだったのですが、ユーザーがランディングページ(LP)に遷移してからのCVRの低さが課題になっていました。
ターゲットユーザーの方に話を聞きながら理由を探っていくと、「資金の使い道が見えにくい」「人件費とはっきりわかり、納得感を抱きにくい」など寄付が集まらない原因が見えてきたこともありました。

海外の学術研究でも証明

オックスファムという海外の著名なNGOを仮の寄付先として、使い道の説明によって寄付額がどの程度変わるのか?を確かめる実験が行われました。

パターンAでは、参加者に団体や活動内容についてだけを説明して、「いくら寄付したいか?」を尋ねたところ、1人あたり平均で7.54ドルでした。
今度はパターンBとして、使途について以下の表のメッセージのように説明したところ、平均で10.25ドルと30%以上増えました。
Cynthia E. Cryder, George Loewenstein, Richard Scheines.(2013)The donor is in the details. Organizational Behavior and Human Decision Processesより)

パターン 活動内容 使途説明 メッセージ 平均寄付額
A 「オックスファム・インターナショナルは、世界で最も効果的な支援活動を行う団体のひとつです。オックスファムは、世界中の人々に幅広い人道支援を行っています。もしあなたがオックスファムに寄付を頼まれたら、いくら寄付しますか?」 7.54ドル
B (上記に加え)「寄付金は、たとえば、困っている人たちがきれいな水を利用できるよう使われます」 10.25ドル
C (上記に加え)「寄付金は、たとえば、困っている人たちががペットボトルの水を利用できるよう使われます」 6.95ドル

さらに使途をより具体的に説明すると伸びるのでは?と、パターンCのメッセージを試したところ、平均寄付額は6.95ドルとパターンAより下がってしまったそうです。

「ペットボトルの水」という表現が、「きれいな水」という表現に比べイメージされにくかったと総括されたとのこと。
使い道の伝え方しだいでは、逆効果になることもあるようで、重要かつ難しいテーマとわかります。

金額に換算できない場合は、どうすればよい?

物資を届ける支援については、このような例を示しやすいでしょう。

しかし教育や福祉などヒトが介在する度合いの大きな支援については、「◯◯円でxxを届ける」と単純にモノや数字に分解できる訳ではありません
スタッフの人件費や事務所の家賃など、寄付の使い道として直感的な理解を得にくい費用が支出の多くを占めることもあります。

ドネーション・サンプルとして単純に金額換算できない場合は、どうすればよいでしょう?

受益者1人あたりの費用に換算する

このような場合によくとられるのが、事業やプログラムのアウトプットから換算する方法です。

例えば、「事業全体にかかった費用」÷「支援を届けた受益者の人数」という計算をすれば、受益者1人あたりの費用が出ます
「月3,000円あれば、1人の児童を支援できます」といったように、分かりやすく換算もできるはずです。

ドネーション・サンプルの計算の考え方

目標金額を示すアプローチも

このように「1人あたりの費用に分解する」方法を取れない場合など、クラウドファンディングのように全体として必要な金額を示す方法もよくとられます。

  • 校舎や病院の建設に◯千万円が必要
  • 「△△ちゃんを救う会」では手術代に◯億円
  • 裁判費用として、◯百万円のカンパを募る

といったように「多額のお金がかかる」と一般的にイメージできるものが使途である場合は、納得感を得られやすいでしょう。

目標金額を示すことで、「みんなで力を合わせて、目標を達成する」「意義のある挑戦に参加する」といった動機を形成しやすくなります。

“Youメッセージ”で、寄付者の立場からの発信を

これまでのような“わかりやすさ”や“具体性”を重視したアプローチには、否定的な意見もあります。
たしかに寄付が集まりやすくなるのはわかるけど、「セールスではないのだから、過度な商業化は慎むべき」「それよりは私たちの活動をもっと理解してもらいたい」といったお考えです。

この記事の冒頭で、「活動内容はしっかり理解されていないけれど、寄付の使途ははっきり覚えていた」という寄付者の方が少なからずいらっしゃった、というお話をしました。
これはNPOサイドが「私たちの活動をより正しく理解してもらおう」と苦心していることからは対照的ですが、ある意味当然なのかもしれません。

「Iメッセージ」や「Youメッセージ」という言葉を、ご存知でしょうか?
自分(=I)が言いたいことをそのまま発信するのではなく、相手(=You)の視点に立って変換したメッセージを伝えるのが大事、という趣旨です。

これをファンドレイジングに置き換えると、「活動を理解してもらう」は団体側の視点、すなわちIメッセージです。
寄付者さん側に視点を移すと、「私の寄付がどう使われる?」「1,000円でも役に立つ?」が気になるはずです。

ドネーション・サンプルというとテクニック論に聞こえますが、大事なのは相手の立場に立ち、Youメッセージに変換することです。
団体の理念や受益者への配慮を大切にしつつも、「例えば〜」や「〜に換算したら」といった表現の工夫で、できるだけ身近にわかりやすく理解してもらえないか?に知恵を巡らせてみましょう。

「私の善意が役立った」体験をつくり出すために

今回は、寄付の使途に着目してお伝えしましたが、最後に「寄付したお金が有効に使われる」とイメージしてもらうためには?に視点を広げて考えてみましょう。

  • 会計報告を公開している
  • 監査をしており、不正がない(認定NPO法人や公益財団法人など法人格)
  • 募金が現地まで適正に届く

例えばこのように確信してもらえる情報を出すことも、重要なはずです。
「自己満足かもしれないが、寄付したお金がどこにたどり着くのか、自分で調べて納得できたところに寄付したい」(女性・50代前半)という方もいました。
日本ユニセフ協会さんが、「100円の旅」というページ・動画を公開していますが、そういったお金が使われるまでのプロセスを見える化する試みも大事でしょう。

また受益者やスタッフから寄付者への感謝を定性的に届けることも、特に活動報告をして寄付をリピートしてもらう上では有効なはずです。
定量的なソーシャルインパクトの可視化も、法人や財団などから求められる局面も多いはずですし、将来的には個人寄付者にも重視されていきそうです。

“NPO業界”にいる人々とそうではない人々とでは、例えば社会課題へのリテラシーは大きく異なります。
「普通の人」にも仲間になってもらうためには、過度な単純化には気をつけつつも、わかりやすさが大切です。

社会課題に心を痛め、「何かできることをしたい」。
でも「自分の寄付なんて、たいしたことない」「少額だとたいして役に立たないのでは?」

そう感じる方々に、寄付者さんの目線で「あなたのご支援が力になる」と伝えることが、ファンドレイザーの大切な役割だと信じています。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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