マンスリー寄付は、コロナ禍でどうなった?NPOの実情と、1年経って分かったこと

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毎月1,000円~など、定額の寄付で非営利団体を応援するマンスリーサポーター。 このマンスリーサポーター収入は、コロナ禍でどのように変化したでしょうか? この1年間の動向と、その背景にある2つの要因をお伝えします。

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目次

NPO/NGOの寄付収入、活動分野などによってはコロナ禍が大きく影響

コロナ禍は、NPOやNGOの資金調達にも大きな影響を与えました。例えば、チャリティーイベントの開催による寄付を見込んでいた団体では、イベント自体が開催できず収入が減ってしまったケースもあります。

これまで大口の支援があった企業からの寄付に頼っていた団体は、企業業績の悪化で「今年は寄付を出せない」といった反応が寄せられたケースもあります。また、国際協力を行うNGOの中には、現地への渡航ができないために事業が停止し、政府からの委託事業や企業との協働が見直しになるなど、収入減に陥った団体も少なからずあったようです。

一方で、支援活動への注目が集まり、寄付収入を一気に増やした団体もありました。例えば、認定NPO法人抱樸(ほうぼく)は、コロナ禍で家や仕事を失った人々を支援するクラウドファンディングで、1億1千万円以上の寄付の獲得に成功しています。

医療従事者や、国内のひとり親家庭・生活困窮世帯の支援などの分野では、SNSなどで緊急支援を呼びかけ、数百万円や、中には1,000万円以上の寄付が集まった事例もあります。

では、マンスリーサポーターからの寄付収入には、コロナ禍でどのような影響があったのでしょう?

私の知る限りでは、「昨対比10~20%増など緩やかな成長」あるいは「前年度と同水準」といった団体が多かったようです。不況に伴い、経済的な理由による退会の大幅な増加も心配されましたが、「想定以下におさまった」団体が多かったように見受けられます。

ファンドレイジングに携わる関係者にヒアリングを行ったところ、「退会率は前年度と同水準」あるいは「退会数はやや増えたが、新規会員数が上回り純増」といった回答が寄せられました。

「継続率」の高さによる収入の安定性は、不況下でも想定内

では、コロナ禍においても、マンスリーサポーターの寄付が安定していた理由は何でしょうか。

マンスリーサポーターの1番の特長は、「継続率」の高さです。入会1年後にご支援を続けている方の割合を見ると、80~95%、約9割となっているケースが大半です。
つまり新しくご支援を始める方が増えるほど、安定的な収入が積み重なっていく、いわゆる「ストック型」の収入になります。

月々の寄付の平均額は団体によって異なりますが、1,500〜3,000円程度が一般的です。仮に、月々の寄付を2,000円とし、5,000人のマンスリーサポーターがいた場合、毎年1億2,000万円の寄付収入が安定的に見込めることになります。

もちろん、急に多数の退会が発生するとこのような計算は成り立ちませんが、通常、退会率は過去のデータによって予測できる範囲に収まることが大半です。今回のコロナ禍のように、予想外の大きな出来事が起こっても、退会率が想定の範囲内だったことは、マンスリーサポーターによる寄付収入の安定性が示されたと言えるでしょう。

補助金や助成金のように、年度毎に採択が決定する資金や、その都度の寄付と比べて、翌年度以降の事業計画が立てやすいのもマンスリーサポーターのメリットです。

使途の自由度を活かし、緊急時にスピーディな支援活動も

マンスリーサポーターによる寄付のもう一つの特長は、使途の自由度が高いことです。

例えば、補助金や助成金は使徒が限定されるケースが多くなります。また、法人や財団からの大口寄付も、使徒が指定されるケースや報告義務が生じる場合があります。

一方、不特定多数の個人から応援されるマンスリーサポーターは、「団体全体の活動に」と寄付を託される場合が多い特徴があります。コロナ禍以前から、「自主財源の比率を高めたい」、あるいは「長期的な事業計画を立てたい」という理由から、「マンスリーサポーターを強化したい」という相談をいただく機会が少なからずありました。

こうした「安定性」と「自由度」の両方の特性をもつ、マンスリーサポーターの寄付が、コロナ禍で力を発揮しました。

社会情勢の急転に伴い、「ひとり親家庭」や「生活困窮者」「学校に通えなくなった子ども」など、支援が必要な対象や活動も刻々と変化してきました。認定NPO法人カタリバは、「小中学校の一斉休校」が発表された翌日の2月28日に、子どもたちの在宅学習やストレスケアを支援すると発表しました。そして、3月2日には「カタリバオンライン」をリリースしています。さらに、経済的な事情を持つ家庭へ無償でパソコンとWi-Fiを貸与するなど奨学プログラムも開始し、コロナ禍で学習環境に十分にアクセスできない子どもたちを対象とした支援を続けています。

コロナ禍のような不確実性の高い状況下で、人員や物資のかかる新規事業を立ち上げるのはリスクを伴います。その中で、カタリバがこのような支援を続けられたのはなぜか。

「継続して支援するマンスリーサポーターが1万人以上おり、団体のミッションを信頼して応援くださっていることが、不況下でもリスクをとった意思決定をする大きな後押しになった」そうです。

ただし、マンスリーサポーターによる寄付は、新しい支援者の獲得が非常に難しいという特徴もあります。次回は「DX」などコロナ禍での動向も含めて、マーケティングの方法論をお伝えします。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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